第二話「応援したいけど、心配もしてしまう」
「合理的配慮の提供を申請しようと思うんです」
私は目の前に座っている心理士さんに話した。
「S先生(主治医のこと)が提言してくださって、私も使えるのならやってみたいなって」
話をしながらチラリと心理士さんの顔を見ると、なんだか…乗り気ではない?
「うーん、S先生の提言も理解できるけど、私は心配してしまうなあ」
「何が心配ですか?」
「こちらの申し出のとおりに相手が受け取ってくれるとは限らない。場合によっては、拒否されることだってある。それによって、せんずさんが学びの機会を失ってしまうのではないかなって」
「…拒否されて、私のメンタルに影響が出るかも?」
「少し心配。それに、合理的配慮って発達障がいの方々が申請するならまだしも、せんずさんのようなパニック症の方が申請するのは、私の経験ではまだないから、相手がどういうふうに受けとるのか…」
「場合によっては“めんどくさいやつがきた”みたいにとられるかも?」
「うーん…」
「(否定しないんかい笑)一応、S先生は障がいの有無及び種別、疾患の種別や症状の重症度などで線引きはされてないっておっしゃってたけど」
「うん、それはそう。法律で保障されている。でもそれを実際に使ってプラスの結果になればえいけど、マイナスの結果やった場合……………大丈夫そう?」
「…ごめんよ。私はせんずさんのやろうとしてることは応援したいけど、心配がやっぱりある」
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私を長年担当してくださっている心理士さんは優しい。
出会った当初は冷たくて、表情の変化がなくて淡々としてて、分厚い壁が張られてる感じがするなーと思い、あまり良い印象ではなかった。
でも私が徐々に主体性を取り戻し、リカバリーへと歩みを進めている現在、心理士さんとの壁が薄くなってきているように感じている(あくまで私の主観ですが💦)
めちゃくちゃ笑ってくれるし、時には友人のような口調で私を鼓舞してくれるし、たまに天然な一面を垣間見ることができるのである。
そして、私のことを否定したりはしない。
一方的な指導や意見、アドバイスをぶつけることもしない。
人間味溢れる専門職で、大好きで、数少ない信頼できる人だ。
専門職だって、専門職である前に一人の「人」なのである。
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さて、話は戻るが心理士さんは“心配性の性(さが)が出てしまう”とのこと。
“専門職としての立ち位置からの心配”と“個人的な心配”が混ざっているような感じがした。
私は人差し指を立てて左右に振り、「チッチッチッ!心理士さんよ、それは野暮だぜ!」と脳内で呟く。
「心理士さん、私の想像力をご存知でしょ?私はありとあらゆる最悪なパターンは想像済みですし、なんなら私の頭の中では、学校と最高裁まで争っているパターンも想像してますよ」
「マジで?(急に口調が砕ける。そういうとこ大好き)」
「それに、結果を求めているわけではないんです。やることに、行動を起こすことに意味があるんじゃないかなって。障害や疾患の有無関係なく、権利擁護(ようご)のひとつとして、自身を守るために声をあげること。私のような、見えない生きづらさを抱えている人間は、特に声をだしていかないと(S先生曰く私は良くも悪くも“普通”で“元気な人”に見えるらしいです)。“察してちゃん”や“助けてもらって当たり前”でおるだけではいかん。特に「合理的配慮」って相互の歩みよりあってのものだし。“受け身で与えられるばかりの患者”でおりたくない」
「何より私が行動を起こすことで、後に続く人達の有益な情報になれたらなって。当事者の人たちと話した時に「合理的配慮」なんか全然希望にならないって言ってたんです。でも私が今回の申請をして、以前より安心して学校に通えるようになったら、その人たちの希望になるし、マイナスな結果だとしても“今後のあなたの人生の有益な情報として、私をサンプルにしてくれ”って思いです。」
「拒否されることなんて容易に想像していますよ。私の想像力を侮ってはダメですよ(ドヤァ)拒否されたからってまたメンタルクライシスに落ちる…………かはやってみんと分からんけど、少なくともそこは自己責任だし、ダメなら今回の学びを今後のリカバリーに活かしていくつもりですよ。まあ、拒否されたらされたで良いネタになるし(笑)」
「でも、拒否されたら多分落ち込みはするので、その時はまた話聞いてください。それくらいはかまんですか?」
「…………………せんずさん」
「はい?」
「ごめんよ、私が間違ってた。やってみよう!」
「(心変わり早い!!!!)あ、はい!」
「S先生とせんずさんの言う通り、やることに意味があるというのが本当に…なんというか…私も心動かされた。せんずさんと話しをすると私もパワーをもらえる」
「本当ですか?嬉しいなあゲヘゲヘ///」
専門職からこう言ってもらえるなんて幸せだ。
かくして50分のカウンセリングの間に、人が心変わりする瞬間を目の当たりにした余韻もそのままに、さっそく申請内容について打ち合わせに入った。
①体調によっては、出席必須のスクーリング(対面)を欠席する可能性があることの理解について。
②私が経験したパニック発作の症状についての情報を提供。
➂パニック発作が出た時のサポートをお願いしたい。
④そして、私の思い。
以上を取り敢えず内容に盛り込むことにして、カウンセリングを終えた。
帰り際、やっぱりマイナスな結果に対しての私のメンタルへの影響を心配されたけど、きっと大丈夫。
今の私は以前の私より強い。
支えてくれている人たちもいる。
うだるような暑さの中、自転車をこいで帰路につきながら、根拠はないがなんとなく大丈夫かなって気がしていたのである。
(つづく)
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